中から見たIPO配分の考え方① 

とある金融機関の営業部屋の会話(あくまでフィクションです!)

冨山:
課長、今度値決めがある新規公開の〇〇なんですけど、☓山さんに配分してもいいですか?

白楽課長:
☓山さんってどんな属性だっけ?

冨山:
先月新規で口座開設した人で年齢は39歳、職業は地元の凸凹社の課長職です。

白楽課長:
うーん、家族構成とか聞いてるか?

冨山:
いや、聞いてないんです。

白楽:
ダメだろ。それは聞いとかなきゃ。自宅は見てきたか?

冨山:
いえ、見てないです。

白楽:
なんで調べとかないんだよ。それじゃ配分できねえよ。

冨山:
一応住所からストビューで見たんですけどふつうのマンションでした。

白楽:
登記簿取るのも面倒だから聞いとけって言ってんだよ。自己所有のマンションかどうか、住宅ローンが残ってんのかとかさ。親の所有だったら配分してもいいよ。

冨山:
そこまで調べとかなきゃダメですか。

白楽:
当たり前だろ。IPOってのはこっちにとっては貴重な営業ツールだからな。特に〇〇ってのは株数少ないだろ?ウチが主幹事だから90%引受だけど、公募増資と売り出し分含めて30万株しか無いんだよ。ウチの支店にはシェアでいうと2%弱だから5000株程度だよ。全部バラして配分しても50人しか渡せないんだよ。

冨山:
100株でいいんで渡して様子見たいんですけど。

白楽:
じゃあ仮に配分したとしてさ、☓山さんが今後どれだけウチの支店の業績に貢献してくれそうなの?説明してよ。

冨山:
☓山さんは凸凹社のエンジニアなんですよ。口座設定の登録によると年収が600万円です。金融資産の登録は1000万円ってなってますね。

白楽:なおさらわかんねえな。それがどうして今後の拡大に繋がるんだよ。そんな属性ならネット証券に行ってもらったほうがいいよ。ウチの対象顧客じゃない。普通のサラリーマンなら時間を割く必要ない。ただでさえ残業時間は月40時間までって人事部に決められたんだからさ。

冨山:
でも凸凹社って法人課のお客さんですよね。あそこに最近支店長がよく訪問してるじゃないですか。なんかの案件になってるんじゃないですかね?ちょっと課長、聞いてもらえないですか?

白楽:
法人課とは案件の話はできないんだよ。ファイヤーウォールがあるから。探りを入れたことが監査にバレたら面倒なことになるだろ。まあたしかに凸凹社はデータバンクで見たら業績がかなり伸びてるみたいだなあ。こっちの課で話を繋いだら評価対象にはカウントされるかもな。

冨山:
どうしたら☓山さんに配分させてもらえます?

白楽:
うーん、じゃあもう少し☓山さんに話を聞いて来いよ。凸凹社の資金運用権限のある管理部長を紹介してもらうか、親が富裕層だったら渡していいよ。それが条件だ。もし親に限らず奥さんの親でもいいけど富裕層だったら100株じゃなくて、ある程度まとめて渡せ。

冨山:
どうしてですか?申し込みが私の担当してる人だけで30人以上いるんですけど。できれば100株づつ、なるべく多くのお客さんに配分していい顔したいんですけど。

白楽:
100株ならせいぜい買付金額が20万円程度だろ。募集株数が少ないIPO案件で、市場はジャスダック上場だから初値も倍近くで寄り付くかもしれんよ?でもどうせそこで売るんだろうから儲けは20万円無いだろ。20万円儲かって大喜びする人が金持ちなのか?あくまで配分していいのは、「配分した事」をこっちの誠意として受け止めて、それを返してくれる人だけだ。IPOの申込みのためだけに来る人は「IPOコジ◯」って言うんだよ。そういうところには絶対に配分するな。リレーションを築く価値のあるところだけに有効に使え。

冨山:
わかりました。そういうものなんですね。

                     ~つづく