スリー・ディー・マトリックス(7777、JQG) 継続企業の前提に関する注記

「継続企業の前提に関する事項の注記に関するお知らせ」
 スリー・ディー・マトリックス2019.06.24 16:30


今日の適時開示で上記の開示が出ました。またバイオベンチャーのキナ臭い開示ですが珍しくもないんですけどね。スリー・ディー・マトリックスはどんな銘柄なのか、どんな事が予想されるのかを考えていきましょう。

1,スリー・ディー・マトリックスとは?

 スリー・ディー・マトリックスはジャスダック(グロース)に上場する、いわゆるバイオベンチャー企業です。発祥は2001年、米国マサチューセッツ工科大学の大学発ベンチャーだったのですが、2004年に日本法人が設立され、2011年10月24日に上場しました。主幹事は日興証券、公募価格は仮条件の上限である2,400円で決定しました。ところが上場当日は売り気配で始まり、初値は1,200円とド安値で寄り付いてしまいます。40%以上の公募割れでした。めったにないひどい案件だったと記憶しています。「黒字になった事がない」だけでなく、公募株数も約200万株と結構な株数で、上場前からかなりの不人気でした。
 ところが上場してから1年半ほど、株価はなぜかスルスルと上昇していきました。2013年6月には6,480円の上場来高値(それまでに4分割しているために計算上は25,920円)と、公募価格からすると約10倍、初値からすれば21倍以上へと腰を抜かすような大相場を作りました。例えば初値で買ったまま放置していたら、12万円が260万円くらいになったわけですから、こういうのがバイオベンチャーの醍醐味なのでしょう。
 もちろん業績が好転したことはありませんでした。バイオ銘柄が上昇するのには業績の裏付けより大事なものがあります。創薬でイッパツ当てるという「夢」は必須です。比べては失礼かもしれませんが、米国ではインフルエンザの特効薬「タミフル」やB型肝炎治療薬「ハーボニ」を開発したギリアド・サイエンシス社が巨大企業に成長した事例もあります。実際に開発成功したからですけど。


2,継続企業の前提とはなに?どうネガティブなの?

 「夢」はいつか醒めるのです。理論上黒字にならなくても企業は存続できます。しかし株主のお金はその間どんどん食い潰されていきます。当然株価はいつまでも維持はできなくなります。
 平たく言えば、継続企業の前提とは、会社が来年も普通に存在していますよ、というある意味当たり前な事を条件にして見通しをしているのです。今日のこの開示は、その前提条件が怪しいという意味です。継続企業の前提と同じ意味でゴーイング・コンサーン(略してGC)とも言われることがありますが、「場合によっては来年生きているか分からない」ところが健全な状態であるはずはありませんよね。
 この継続企業の注記の一歩手前に、「継続企業に関する重要事象」というコメントが出ることがあります。これも平たく言ってしまえば、「もしこういう事態になったら会社がなくなるかもしれない」という注意書きです。注記も重要事象も決算短信や有価証券報告書に記載義務があって、無ければ無いと、あれば詳細に記載しなくてはいけません。
 経営者としてはそんなもの記載したがることは当然無いのですが、載せる載せないは基準があって勝手に判断してはいけないことになっています。実際誰が決めるのかといえば監査法人です。有価証券報告書には最後の方に必ず会計監査を行なった公認会計士が、「全部帳簿を見たよ!問題なかったのでこのままイケるよ」とサインや押印をしてある部分があります。これがないと決算書としては効力が発生しないのです。会計士はもし自分の見落としが原因で株主に損害が出ると責任を問われますから、もしイケない部分があると、

「ちょっと社長?監査したけどもう何年も赤字じゃないスか。現金もあまり残ってないし、来年までの社員の給料とか取引先への支払いとかどうするつもりよ? え?新株予約権発行で金を集めるから大丈夫だって?そりゃ株価が上がるって社長が言い張ってもうまくいくとは限らないじゃん。せめて継続企業の注記は記載しないとハンコは押せないわ~。」

とか言われて渋々やることなのです。 


3,スリー・ディー・マトリックスはどうネガティブなのか

 ウィキペディア「継続企業の前提」参照

 ウィキによるとスリー・ディー・マトリックスに当てはまる状況として、継続して営業損失及び営業キャッシュフローのマイナスを計上している事です。2012年4月期に営業黒字になって以降、ずっと赤字です。営業キャッシュフローもずっとマイナスです。全く儲けが出ていないままの存在ですが、ふつうはこういう会社ってゾンビ扱いされませんか?バイオ企業って言ってもゾンビ治療薬は作ってないでしょ。

3DM 営業利益、営業CF

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                             (単位百万円)

5年以上に渡ってこの状態って、先日記事にしたメディシノバとそっくりに見えますけど。いや、メディシノバは4年目リーチですがこっちは5年超えてる。なんで上場廃止にならないのでしょう?


3,上場廃止の可能性はあるか
 
 日本証券取引所 上場廃止基準(JASDAQ)概要によると、
「最近4連結会計年度(注4)における営業利益(注5)及び営業活動によるキャッシュ・フロー(注6)の額が負である場合において、1年以内に営業利益又は営業活動によるキャッシュ・フローの額が負でなくならないとき
※JASDAQグロースの上場会社である場合には、最近4連結会計年度に新規上場申請日の属する連結会計年度の翌事業年度から起算して5会計年度が含まれる場合を除く。」
とあります。
 つまりスリー・ディー・マトリックスは2011年上場なので、2016年4月期まではノーカウントって事ですね。来年2020年4月期が営業赤字、営業キャッシュフローのマイナスであればリーチ!2021年4月期も同様であれば上場廃止というわけです。とりあえずメディシノバより1年遅れの症状です。少なくとも2年程度はこの業績基準によって上場廃止になることはなさそうです。あくまでこの基準に限った話でして、ほかの基準抵触で終わる可能性もありますが。

 さきほど有価証券報告書の話をしましたが、2019年4月期 決算短信がすでに6月14日に発表されています。短信は決算の締め日から45日以内に発表する(スリーディーの本決算は4月30日なので6月14日)決まりですが、一応民間企業である日本証券取引所との契約なため、いわば民事です。それに対して有価証券報告書の提出期限は3ヶ月(つまり7月末)ですが、金融商品取引法という法律に基づいた罰則があります。先日アップした上場廃止事由の一覧を見てほしいのですが、有報絡みの上場廃止事案は非常に多いです。この短信を見た監査法人がいま1ヶ月後提出予定の有報レビューを行なっているのでしょうが、その過程で内容に「物言い」が付いていることを暗示しているような開示ですね。
  
4,ほかに似たような状況の銘柄は?

デ・ウエスタン・セラピテクス(4576、JQG)が2019年3月28日に当社株式の業績基準に係る猶予期間入りに関するお知らせを開示したように、バイオベンチャーのネガティブな上場廃止懸念企業は結構あります。業態の傾向からこの業績基準に抵触しそうなのはバイオ屋さんが最も多いと思われます。今後もネガティブな開示を、随時取り上げていきたいと思います。