花月園観光、逝く (後編 ) 同様に上場廃止の危機にある銘柄群

前回の記事で上場廃止の猶予期間にある銘柄を挙げました。

今回はそれぞれの状況を検証しながら今後の推移を予想していきます。

 

曙ブレーキ (7238、東1)

 「時価総額基準」で猶予期間に入っています。期日は2019年10月18日です。

ただ花月園観光と違いハードルはかなり低いです。

曙ブレーキは海外戦略の失敗で直近5期の間、断続的に赤字が続いており、債務超過に陥っていました。今年1月にはADR申請を行い銀行団へ債権放棄の要請を行っています。結果借入金の半分に相当する560億円の債権放棄と事業再生ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)から200億円の優先株出資を受けることとなり、一応再建の道筋は立ったわけです。ただ再建計画の中で債権放棄の額が再建総額の10%を越えるときは、1ヶ月の審査期間で平均株価と最終日の終値ベースで時価総額が10億円を下回ると上場廃止となる規定があります。

(有価証券上場規程第601条第1項第7号後段及び同規程第 605 条第1項)

ただ同社の発行株式数は135,992,343株であり、平均株価、終値ともに「8円」を越えていればOKです。10月18日の終値は225円、時価総額で300億円以上となっていますので結果余裕を持ってとりあえずの上場維持は決定しました。

  

メディシノバ (4875、JQS)

「JQ業績基準」で猶予期間に入っています。

判定の基準になるのは2019年12月31日です。これはメディシノバが12月決算で、これまで4期連続で営業利益、営業キャッシュフローが赤字だからです。5期連続はアウトになるのですが、この日で締めた決算内容は通期の有価証券報告書が提出される2010年6月10日過ぎに上場維持の可否は本決定します。

通常は3ヶ月が提出期限なため2020年3月末に決定するのですが、同社は実は外国企業としての取り扱いを受けているため、毎年提出の期限延長を受けているのです。

とはいえ決算短信は毎年2月半ばに発表しているので、その時点でダメなら6月の有報提出を待たずに分かります。

で、途中経過はどうなっているのでしょうか?

2019年6月末の時点、つまり残り時間があと半年の段階ですが、全然ダメじゃん。

営業利益、営業CFともにマイナスなだけでなく、営業赤字は拡大してるし。

次の決算短信発表(3Q)は今週末くらいです。これでダメならその次、本決算の短信は2月半ばに行われる予定です(去年は2月14日でした)が、この時点で上場廃止が事実上決定するのです。

 

(3)デ・ウエスタン・セラピテクス(4576、JQG)

「JQ業績基準」で猶予期間中です。メディシノバと同様ですね。

やはり4期連続の営業利益及び営業キャッシュフローがマイナスとなっています。

 判定の基準になるのは2019年12月31日です。メディシノバと違う点は、まず同社は国内企業であるため通常の日程で有報提出期限が来ることです。3月末の提出によって上場維持か廃止かは正式決定します。前置きでやはり2月半ばの短信発表(昨年は2月14日)でおおよそ分かります。

そして途中経過は、8月8日の短信、8月9日の報告書を見ると営業利益も営業CFも黒字になってる!

まだ心もとないですが、上場来初の黒字化を達成する見込みだそうです。

ちなみに同社の時価総額は現時点で約8.5億円と小さいですが、JQの時価総額基準は2.5億円ととてもユルいので当面心配はなさそうですね。

 

(4)小僧寿し(9973、JQS)

 「債務超過」で猶予期間入りしています。同社は12月決算ですので2019年12月31日締めの内容で債務超過が解消されなければ上場廃止になります。

ただ以下のリリースで書いてあるとおりJFLAホールディングス(3069、JQS)やEVO FUNDへの第三者割当等々で債務超過解消のメドは立っているとのことです。

  ただねえ、なんかスジの悪い感じなんですよねえ、割当先。いや具体的にどう悪いかって言えないんですけど。単に感情論というか、これまでの引受事例を見て思っただけです。とくにEVOさんに対してはズルいというか羨ましい気持ちでいっぱいです。

ところで同社の株価は現在20円そこそこです。引受先が大量に売却して10円を割ると

株価10円基準」で上場廃止基準に引っかかりますよ?

そう、JQには株価基準があるのです。2016年9月に界隈の名門サハダイヤ(9898、JQS)が逝ったあの基準です。

 

(5)倉元製作所(5216、JQS)

「債務超過」基準抵触で猶予期間中です。

液晶基盤のメーカーですが、JDIばりに5期以上赤字続きです。同社も12月決算のため、判断基準は2019年12月末の有報ベースになります。確定は提出期限の2020年3月末、決算短信発表の2月半ば(昨年は2月14日)に分かると思います。

11月半ばに3Qの内容が出るはずですが、2Qはどうだったか?

1億5300万円の赤字」 ダメじゃん。

どう考えても自力での債務超過解消は難しいと思うのですが、第三者割当などを引いてくれるスポンサーは未だ見つかっていないようです。8月初旬に河北新聞が「支援先が見つかったみたいだべ?」と観測記事を出してましたが、同社はお決まりの「当社が発表したものではございません(以下テンプレ)」を出した後ダンマリを決め込んで2ヶ月以上経ちます。やはりガセだったのでしょうか?

いずれにしても支援先決定→条件決定→払込というプロセスは結構手間も時間もかかるものですよ。もう2ヶ月ちょっとしかないけど。

3Q発表時にはハッキリさせて貰いたいものです。11月14日ですか?

 

(6)小島鉄工所(6112、東2)

「時価総額」基準抵触で猶予期間入りしています。2020年2月29日(土曜日なので前日の2月28日に結果は出る。そう言えば来年は閏年。)までに時価総額10億円以上になることが必要です。

発行済株式数は1,003,564株。株価の基準は「997円」です。現在は900円ちょっとですので100円程度の値上がりをキープする必要があります。

ここまでの6~9月までは終値、月中平均ともに997円を越えた月はまだありません。今月を入れてあと5ヶ月ありますが、今月は難しそうですね。毎月月末は目が離せません。

受注残は順調に積み上がっているとの事ですが、株価には反映されてこないですね。

今必要なのは地味な業績云々よりもパンチのある派手なIRなのでしょう。

 

(7)千代田化工建設(6366、東2)

「債務超過」

 2020年3月末の通期有価証券報告書が基準となり、提出期限である2020年6月末で正式決着します。2020年5月連休明けあたりに決算短信で目処がつく予定です。

同社はLNGプラント建設の大手ですが、工期期間管理でヘマをしたため巨額の追加費用が発生し、2150億円の巨額赤字を計上、2019年3月期は600億円近い債務超過に転落していました。このときすでに東証1部から2部への市場落ちを食らっています。

ただ今年6月末から7月初めにかけて筆頭株主の三菱商事からの資本注入で700億円を調達したため、すでに債務超過解消は終えています。さすが商事さん、太っ腹!

 

(8)中村超硬(6166、マ)

「債務超過」で猶予期間中です。2020年3月末の通期有価証券報告書が基準となり、提出期限である2020年6月末で正式決着します。日程は先程の千代建と一緒です。

同社は2015年に上場した研磨・切断用ワイヤーを製造する企業ですが、なんでも主力商品であるダイヤモンドワイヤーの市場価格が70%も下落してしまったのだそうです。

それに加えて製造設備の減損を行わなくてはならなくなったために2019年3月期には80億円もの赤字を計上、約13億円の債務超過に転落しました。その状況を解消するための施策として、まず第一に中国企業への生産設備売却と技術供与を交渉しているそうです。第二の施策として第三者割当増資で新株予約権を発行しました。

「第三者割当による新株予約権の発行」は死亡フラグの初期症状です第三者が大量に株式転換行使と売却を際限なく繰り返すので、株価は長期的には上値が限られています。もし何かのあおりで株価が急騰したときは怪しいと思ったほうがいいです。はめ込みの罠にかかるのは面白くないでしょう?

だって割当先を見てください。

仮に債務超過が解消されたとしても、中国企業に技術供与しちゃって大丈夫なのかという点で心配ですし、また反市場勢力みたいな輩のオモチャになってなぶりものにされているような株にお金をぶち込みたいですか?それは悪趣味というものです。

 

(9)フルッタフルッタ(2586、マ)

「債務超過」で猶予期間入り中。上記の千代建、中村超硬と日程は同じ。

ところでアサイーってなんなの?アマゾンフルーツ?美味しいの?

2014年12月に上場したわけですが、6,500円の初値が眩しすぎます。黒字だったのは上場した期のみでずっと赤字垂れ流し企業。そして結構前から「第三者割当による新株予約権の発行」を繰り返していますが全く効果が出てこない。ある意味やる気が無さすぎて清々しくさえある、と思ったら

あの監査法人アリアが会計士に就任してるじゃないですか!先日インドでネガティブなインパクトを与えたあそこ(6067、マ)をウルトラCで窮地を救ったあのアリアじゃないですか。お決まりのパターン過ぎて笑えますが、一応上場維持の意志はあるんですね。

いや、正直どうでもいいけど。

 

 

(10)松尾電機(6969、東2)

「時価総額」で猶予期間中です。期間は2020年4月30日までです。結構先ですね。

同社の発行株式数は2,572,000株ですので必要な株価基準は「389円」となります。

大阪の電気部品屋さんですが、要するに自動車メーカーの下請けです。5期以上赤字が続いており、磨り減って残った自己資本はあと175億円ほど。この調子ならすぐに債務超過とはならなそうですが。

実は去年2018年12月末で時価総額が10億円を割っていました。2019年3月末にはいったん10億円を回復したのですが、今回再び10億割れで猶予期間にカムバックしました。こういった企業はウロウロと死線を彷徨うがごとく猶予期間入りの常連になることが多いです。

 

(11)さいか屋(8254、東2)

「時価総額」に抵触し猶予期間入り。2020年5月31日まで。

発行済株式数は 3,135,314株のため必要となる基準株価は「319円」。

2016年2月期から赤字が継続しています。川崎の老舗デパートだったのですが、今は藤沢店が旗艦店になっています。百貨店業界は10年以上前から斜陽化しており、地方のデパートは絶滅危惧種に指定されているとかいないとか。同社も2009年には業績悪化を受けて債務超過に転落、ADR申請を行ったとき以来、業績はフラフラしています。

最近は株価もフラフラしており、この時価総額基準抵触は昨年12月から4回目です。

 

(12)カネヨウ(3209、東2)

「時価総額」で猶予期間入り。日程はさいか屋と同じく2020年5月31日まで。

発行済株式数は1,406,620株なので必要となる基準株価は「711円」。

直近は700円割れですので微妙なラインを行ったり来たり。

大阪にある羊毛やインテリアの商社で兼松が30%強の筆頭株主です。時価総額基準抵触はここ数年で3回目とやはり常連のおじさん顔(従業員の平均年齢は50歳近い)ですが、意外と業績は悪くないのですね。実はここ5年間赤字になった事は一度もなく、地味ながらコツコツと売上を積み立てる燻し銀が光ります。割安株と言えますが流動性の低さが問題なのでしょう。

 

(13)リード(6982、東2)

「時価総額」に抵触し猶予期間入り。日程はさいか屋と同じく2020年5月31日まで。

発行済株式数は2,632,960株なので必要となる基準株価は「380円」。直近株価は362円。

埼玉にあるスバルの下請け。10億円割れは2ヶ月ぶり2回め。カネヨウ同様に業績は別に悪くはない。

 

(14)光陽社(7946、東2)

「時価総額」に抵触し猶予期間入り。日程はさいか屋と同じく2020年5月31日まで。

 発行済株式数は 1,400,100株なので必要となる基準株価は「715円」。直近株価は722円。

犬養岬太社長はまだ37歳ですか?大和証券出身だそうです。

大株主の異動や大量保有報告書を見てるとなんだかオーナー一族の持ち株を買い取りすぎて自社株が20%越えてしまってるって状態、どうなんでしょう?

 

文教堂(9978、JQS)

「債務超過」で2020年8月31日までが猶予期間。

詳しくは以前の記事  

 をご覧ください。