電子部品商社のエクセル(7591、東1)を村上ファンドが1株あたり1,610円で買収(スクイーズ・アウト)後、同業の加賀電子に売却することで合意したそうです。
エクセル側の開示↓
「株式会社シティインデックスイレブンスとの株式交換契約締結及び加賀電子株式会社との経営統合に関するお知らせ」 2019年12月9日
要点をまとめますと、
- 現時点で約40%を占める株主の村上ファンドが3月末に、一般株主へ1株あたり1,610円の金銭交付を行い上場廃止にする。最終売買日は2020年3月27日。
- 今回の村上ファンドの買収金額は約140億円(現保有40%の金額は含まず)。
- 村上ファンドは「シティインデックスイレブンス(CI-11)」というハコと合併させ、エクセルが保有する不動産を貰う。
- 残った営業用の資産(営業権や人員かな?)を1億円で加賀電子に売り払う。加賀電子は簿価83億円のエクセル上澄み液を1億円で買うので82億円の特別利益が発生する。
- 日本と中国での独占禁止法などに引っかからない事を前提とする。
発表のあった本日2019年12月9日の引け値は1,261円。値幅制限は300円なので明日は1,561円ストップ高、翌12月11日に1,600円程度で膠着すると思われます。
金銭交付だと個人株主は特定口座の売却に該当しないのではないですか?
とすれば損益通算出来ないので場で売却したほうが便利ですね。
1,610円というと直近の株価よりはまあ高いっちゃ高いですが、1株純資産(BPS)2,803円、1株利益(EPS)予想141円ですから、PBR0.57倍、PER11.42倍となリます。 なんか安く買われちゃった気がしないでもないです。
ただ開示を読み込んでみると、エクセルは相当追い込まれていた様子が見て取れます。ここ数年中国勢の攻勢、日系電機メーカーの凋落で業績は右肩下がり。特にここ数年で言うとシャープが中国企業になったため注文が激減した事や、あのジャパンディスプレイ(JDI)とのビジネスも失速し、そろそろ業績もヤバくなってきたところだったそうです。
村上ファンドは4年ほど前よりエクセル株を断続的に買い進んできており、直近では39.94%と実質的には筆頭株主になっていました。2015年頃のことですが、エクセル側も時を同じくして「ピンでやってくには無理があるかもな・・・」との考えはあったそうです。どこかと経営統合しないと生き残りは難しいとの認識です。ただ業績が下降し続けており、拾ってくれる相手もなかなか見つからない状況でした。
そんな中、今年3月頃より村上世彰氏と話し合い、5月に入って加賀電子と話をつけてもらった結果、本格的に経営統合を進めることとなったそうです。今回のスキームなど具体的なことは8月におおよそ決まり、2Q 決算の内容により金額が妥結しました。
まあ仰るとおり、日本のエレクトロニクス産業は10年前と比べて死屍累々といった状態ですからね。部品商社もどうしていいかわからないのかもしれません。三洋電機が吸収分解、シャープは中華資本、カーナビのメーカーは上場企業が無くなりました。液晶が主力商材ってだけでもお先真っ暗だったエクセルも、やり手の加賀電子さんに助けてもらえる事になってよかったのかもしれません。
それにしてもかつては蛇蝎のように嫌われていた村上ファンドですが、この度の案件はとても友好的に話がまとまって、なおかつ超クリーンな感じのファインプレーに見えますが、「おお?どうしちゃったのww」とは笑えない今日びの日本企業の困窮が見て取れます。
村上さん、エクセルの不動産買取るみたいですが、自分でバラすんでしょうか?手間かかりそうですけど。ところでやはり保有中の三信電気(8150、東1)、リコー(7752、東1)、川崎汽船(9107、東1)などの案件進捗を知りたいですね。
ちなみに、「村上ファンド」というのは昔から村上世彰さんが率いるファンドの俗称で、実際の名義は以下の名義で買ったり保有しています。これで全部ではないですが参考までに。
- 南青山不動産
- C&I Holdings
- 株式会社レノ
- シティインデックス
- オフィスサポート
- エフィッシモ
- 株式会社ATRA
*2020年1月22日に村上ファンド関連の記事を投稿しました