大戸屋、ガイアの夜明け砲を被弾 ブラック批判?

「そこまでの炎上案件か?これ。」

というのが実際に見てみた、わたくしトミヤマの感想です。

先日の2019年12月10日、火曜日の夜22:00に放送されたテレビ東京の人気番組である、「ガイアの夜明け」第893回目の放送

 で密着取材された大戸屋HD(2705、JQS)がネット界隈で炎上しています。

「これはブラック!」

「社長がパワハラ!」

「密着取材と称する暴露」

のように、「ブラック企業スクープ」と評判ですが、オープニングから最後まで通しでBODで見てみたところ、そんなに言うほど悪い印象はありませんでしたよ?

少なくとも今からちょうど2年前の、2017年12月26日に火を吹いたガイア砲を最初に被弾したレオパレスに比べたらテレ東側にはあまり大戸屋に対してのやってまえ感はありません。

このブログでも以前、以下の記事でコメントしていますのでご覧ください。

 

特に山本匡哉社長が店主会(全国の店長を集合させて行う会議)での発言に批判が集中しているようです。

「目が死んでるんだけど。本気でやってるように見えない」

「お店なくなるよ?」

 

この店長たちを詰めているような発言や様子に嫌悪感を覚えての炎上らしいのですが、決してそういう文脈ではないと思うんですよ。なんというか、部分的な画ヅラだけを見て脊髄反射しちゃった的な。

 

そもそもこの回の趣旨は、「残業削減」「働き方改革」に対する大戸屋の取り組みです。今年2019年4月1日に施行された働き方改革関連法によって従業員の残業時間を法的に規制し、違反した場合には最悪使用者(法人または経営者)に懲役を食らわすという状況になったわけですが、当然上場企業である大戸屋HDもその対象であるわけです。

たしかに定食屋チェーンである大戸屋が位置する飲食業界は、特にブラック呼わばりされている業界です。居酒屋チェーンのワタミは賃金不払いどころか新入社員を数ヶ月目で自させたりするブラック常習犯として飲食業界のイメージを形成した代表的企業だったのです。「飲食業=ブラック」はすでに定着したイメージになっています。

ただ今回の放送の趣旨と大戸屋の取り組みはあくまで、「残業を減らしながら利益を出すにはどうしたら良いのか?」という視点であったと思います。

 上記の山本社長の発言も

「目が死んでるんだけど。(残業を減らす改革を)本気でやってるように見えない」

「(残業減らすだけで利益が出ないと)お店なくなるよ?」

という文脈に聞こえました。

 

金融機関に置き換えると大戸屋の店長は課長クラスのポジションだと思います。組合員は残業代も発生するため日々早く退社させるようにとの命令が下りてきますが、毎日消化できずに積み上がっていく仕事は課長クラスが背負わないといけない上に残業代は出ない。そんな働き方改革の餌食になりつつある景色から見たら、残業代がつく大戸屋の店長さんが残業削減に取り組めるって結構いいお話だと思えちゃうんですよ。番組の中では社長も含めて一応試行錯誤を繰り返している様が映されていました。正直うらやましい。少なくとも番組を見た大戸屋の中の人へ何かしら訴求するものがあるんじゃないかと。

 

ところで製作側のテレ東は労働時間守れてるんですかね?下請けの協力制作会社にブン投げしてるとかは無いですよね?

どこかに負荷(言い換えれば「貧しさ」)を押し付けるだけなら、それは社会全体で粉飾してるに過ぎないわけです。過半数の人の幸福のために残りの人を生贄にする。今住んでいるのはそんな世の中じゃないとあなたは言い切れますか?

 

脱線するけど、年明けから案内人は江口洋介さんから松下奈緒さんに交代するんですね。

 

大戸屋とはどんな会社?

大戸屋 ちゃんとごはん

 

大戸屋は1958年、三森栄一氏が東京池袋で学生向けの定食屋として創業しました。栄一氏の甥である三森久実氏が和食の定食屋チェーンとして店舗を増やし1983年に法人化、2001年にはジャスダックへの上場を果たして今に至ります。現在国内で約350店舗を運営、売上高は257億円。関東での出店が6割近くを占めています。業績は以下の通り

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2019年12月13日の引け値は2,350円です。2019年3月期の実績ベースで計算した指標は以下の通り

1株純利益(EPS)=7.64円

1株純資産(BPS)=633.17円

PER=307倍

PBR=3.7倍

ROE=1.2%

投資対象としては正直微妙です。いや、はっきり言ってダメです。

だって「儲かってない会社の頭打ち感」しか見えない。

 

創業者の急死

実質的な創業者である三森久実会長が2015年に肺ガンで亡くなりました。57歳の若さでした。ガンが見つかってから1年足らずでの急死だったのです、久実氏は後継者に自分の子供である常務取締役の三森智仁氏を指名していたのですが、経営陣から事実上追放されてしまいます。久実氏の未亡人である三枝子氏が智仁氏とともに久実前会長のお骨を持って、現在は会長である窪田健一社長 (久実前会長のいとこ )の執務室にアボなしで突入、譲位を迫り大騒ぎするといういわゆる「お骨事件」が勃発しました。

大戸屋はカリスマの急死によってお家騒動が発生し、求心力を失っていきます。

 

バイトテロ

2019年2月16日に、大戸屋にりんくうシークル店のアルバイト従業員による「不適切動画事案」が発生します。俗に言うバイトテロです。この一件によって大戸屋は2019年3月12日を一斉休業とし、店舗清掃と社員教育に費やすこととしました。主に全国展開している飲食チェーン店でバイトテロが続出していた時期に起きた事案であり、早急かつ適切な対応だったとして大戸屋は一定の評価を受けます。

どうでもいい話ですが、私の勤務先に金融庁や財務局の検査が入り会社が営業停止を受けたことがあります。そのときはしおらしく支店で研修を受けつつもお詫びの電話を一通り顧客にかけた後はすることもなく、何年ぶりかの定時退社で普段よりも遥かに気楽な気分で家路についた記憶があります。この日の大戸屋の社員さんたちも定時退社できたのなら幸いだと思いました。

ただ、この事件に関係なく業績はすでに下降の兆しが出ており、2014年くらいから月次の既存店売上高は前年比マイナスが出始め、2016年には新規出店分を含めても売上高が伸びなくなってきていました。 

 

デフレは存在自体が悪

飲食業など内需産業は人口減により売上高は基本的に下がっていくのが当たり前な時代になりました。労働力、人手も基本的には足りなくなっていく。日本という社会は縮小しながら落とし所を探る事になったのです。それは現状維持すら難しい「撤退戦」です。人口が減るのはすでに10年以上前から分かっていたはずなのに戦線を伸ばしすぎたのです。引っ込みがつかないまま、いまだに明確な撤退命令はありません。ひょっとして我々はインパールかどこかにいるのでしょうか?

 

今回の放送を見て思ったことは他にもあります。労働力の安売りがデフレの原因だと言うことです。登場した店長は3人いましたが、そのうちの一人が、会社を愛するがゆえに残業をして会社に貢献したい、公私関係なく会社の発展と自分を同一視するというタイプです。ちょっと前まではこの手の社員がスタンダードで唯一の選択肢でした。むしろこのタイプであることを社内でアピールしないと生存権を脅かされることもしばしばあったのです。いまでもブラック企業の特徴にこの現象が挙げられます。

個人の職業観や仕事への姿勢はもちろん自由です。しかし往々にしてこのタイプは考え方を人に押し付けがちです。また、仕事熱心ということは根本的に労働力を安売りしがちです。私は全国展開する飲食チェーンの上場企業を担当していたことがありますが、1代で築き上げた飲食系企業のオーナーや経営陣は概してこのタイプが多く、自分と似た考えの部下を引き立てます。結果企業の経営陣は本質的に自分の労働力を安売りすることを引き換えに栄達した人達で固められることになるわけです。大戸屋の山本社長はバイト上がりから社長になったという叩き上げだそうですから典型的な例じゃないでしょうか。それ以外のタイプの生き方を選ぶのは実質的にいろいろとシンドイ目に合うのが現状です。

ただ皆が皆、滅私奉公でサービス残業に唯々諾々と従事するような事は社会全体の価値を下げる原因です。労働力デフレが賃金を押し下げる原因であることは間違いないですし、仮に滅私奉公した店長が経営陣入りできたとしても、労働力を搾取する側に回れただけであって収入が増えるかどうかは別問題ですし、このビジネスモデルがそれまで持続できるかどうかも疑問に思えます。結果全員なかよく貧困化するという誰も得しない焼け野原が目に浮かびます。

 

大戸屋の現場で働いたこともない、いちアナリストの意見ですが、大戸屋はセントラルキッチンや食券券売機などを導入するなどして、現場の店員の作業量自体を削減する努力をするべきではないでしょうか。

大戸屋は店舗での仕込みや調理にこだわりがあってそれが自慢のようですが、残念ながら客に店舗調理のこだわりは映らないと思います。今年大戸屋はメニュー単価の値上げを行いましたが、てきめんに客足が引きました。はっきり言ってこだわりより値段なのです。もちろんデフレに対して値上げ自体はいいことに思えるのですが、社会全体にそれを受け入れる余裕はないのです。品質(味)をキープしながら作業工程の削減などでコストを下げるのが正しい道なのです。そのための工夫が必要なのではないかと。

 

また工夫は作業時間短縮、労働時間削減が第一義であるべきではない。作業効率の向上などの楽をする方向でなくてはならないと思います。

 

これは大戸屋に限らず日本の企業全体に言いたいことですが、残業云々の前に労働時間ベースで給与を決める制度が悪いのではないでしょうか? 時給制度しかり、終身雇用制度しかり。日本の企業は昇進して役職につかないと給与ベースが増えない仕組みであることが多いため、今後役職を増やさない以上、このままでは社員に報いる手段が無くなるのです。作業量、成果量で報酬を決めたほうが明確だと思います。明朗会計です。「コレやってくれたら〇〇円だよ。終わったら帰ってもいいよ。」と言ってくれたほうが頑張れませんか?早く終わったからって別の仕事やらされないし、やってもいいけど追加で〇〇円ね!って言えるし。そうすれば皆もっと割のいい仕事見つけようとするんじゃないですか?必然的に産業の新陳代謝が進んで、「割安ジャパン」も返上できたらいいなと。番組を見ての感想です。