倉庫精練(3578、東2)が2020年1月6付で時価総額基準規定により上場廃止に係る猶予期間入りに指定されました。
東証マーケットニュース https://www.jpx.co.jp/news/1021/20200106-01.html より
上記の通り今年の9月末までに時価総額が10億円を越えないと上場廃止になります。
発行済株式数は1,428,015株であるため基準となる株価は701円となります。毎月の月中平均と月末の株価が701円を越えていれば基準はクリアされます。直近の株価(1月9日)はちょうど701円となっていますが、とにかく板が薄く出来高の少ない銘柄なためいろいろと微妙な状況です。
当該銘柄はこの時価総額基準で猶予期間入りするのは2017年9月以来3回目と、やはりこの規定に抵触するメンバーの常連です。
倉庫精練とはどんな会社?
3,600銘柄以上も上場していると聞いたことのない会社も当然あると思います。正直言ってこんな上場会社は知りませんでしたので、とりあえずどんな会社なのかを調べてみました。
倉庫精練は石川県金沢市にある繊維加工、染色を手掛ける企業です。会社の成立は1914年と100年以上の老舗で、1962年に当時の大阪証券取引所に上場して現在に至ります。老舗の繊維業といえば明治の殖産興業、富国強兵の時代に国策で外貨を稼ぐために勃興した歴史的な産業というイメージがあります。悪く言い換えれば前近代的、旧世紀の遺物という印象なのですが間違っていたらすいません。
実際この会社の業績はずっと右肩下がりで本業の状況を示す営業利益は黒字になった期が見当たりません。何度も希望退職を募っており、現在従業員は100人も残っていません。2013年に業績改善を狙ってメキシコに新工場を建設し自動車のシートを加工する事業に乗り出しましたが逆に足を引っ張る結果に陥りました。2016年8月に発行済株式の33.7%を保有する実質的オーナーの西川文平氏が逝去し、相続のために文平氏名義の株式は売却される見込みとなりました。おそらく遺族も経営には関わる意志がなかったのでしょう。また西川文平氏には倉庫精練株に関して相続対策を行った形跡があまり見えないのです。これによって経営はさらに混迷していきます。
見かねたメイン銀行の北國銀行が地元の有力繊維業者である丸井織物(非上場)に頼み込み支援を仰ぎます。丸井織物は全く乗り気ではなかったようですが、やむなく引き受けることとなり2017年3月27日に公開買付を行うことを発表、買収金額約5.7億円で発行済株式の50%超を買付して子会社化しました。
ただ倉庫精練はここ10年で従業員は3分の1以下に減り、役員も就任辞退が相次ぐなど単体ではヘロヘロで立ち直る力は残っていません。実際買収した丸井織物も扱いかねており、件のメキシコ工場などを売却したり、外部から招いた人材を社長に据えて業績回復を図っていますが売上高の回復には至っていません。すでにリストラなどコストカットできる部分はもうすでにないのでしょう。
見通しは?
丸井織物がTOBを行った2017年3月の時点でも今回同様に時価総額基準で上場廃止に係る猶予期間入りの状態にありました。TOBはそれを救済する意味でもあったのです。
実は亡くなった元オーナーの西川文平氏が保有する株式がまだ処分されていないと思われます。相続手続きが完了していないのかもしれませんが、流動性が低すぎて処分できないということもありそうです。丸井織物に北國銀がTOBを持ちかけたのは倉庫精練への融資に関して上場を維持するというコベナンツが付帯されているか、または故西川氏の相続人との関係性に因るものなのかは分かりません。いずれにしても倉庫精練の資本状況に関してはまだ問題が解決していないことは確かです。
倉庫精練 四半期報告書-第167期第2四半期(令和1年7月1日-令和1年9月30日) 2019年11月11日開示 より抜粋
株価としては701円とちょうどギリギリの水準ですし、予想BPSは1024円程度として今期予想PBRは0.68倍といったところですね。
倉庫精練 「非上場の親会社等の決算に関するお知らせ 」(2019年3月29日)を拝見すると、丸井織物さんはパッと見でほぼ無借金経営で純資産も82億円程度お持ちのようです。あらっ!預金だけでも30億円もお持ちじゃないですか!ここは乗りかかった船ですし、親子上場の解消は世の流れですけど、子会社だけ上場させてる事はそれより不健全ですよ?この際残りの49%も買い取って貰えないでしょうか?プレミアム乗せてもせいぜい6億円程度のお買い物ですよ。
「市場は丸井織物の追加TOB待ち」というほど出来高のある銘柄じゃないですけどね。