東芝子会社で粉飾発覚 伝統芸「チャレンジ」再度お披露目か?

2020年1月18日(土曜日)の11:30に、東芝(6502、東2)の連結子会社である「東芝ITサービス(TSC)」で200億円規模の粉飾が行われていた可能性があるとの開示が行われました。やはり東芝には子会社にも粉飾の遺伝子が脈々と受け継がれているようです。

まずもって平日以外に株主総会関連以外の開示はロクな話じゃないんですよね。開示義務は可及的速やかにという決まりはあるものの、平日18時以降や市場の休日に開示する内容って「なるべくみんなの目に触れないように」とステルス性を付加する意図があると思うべきじゃないでしょうか。

 

実際この事案がどれほど影響があるのかを数値的に推測してみます。

以下は直近2Q(2019年11月13日発表)の東芝の有報です。

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色付きの「デジタルソリューション」セグメントが今回の粉飾で影響のある部分です。売上高で1408億円、営業利益で61億円とあります。仮に200億円が無くなったとしても全体からするとそれほどのパーセンテージではないでしょう。3Q で消し込みに行くとの事ですので数値自体はそれほど影響はしないかもしれません。

 

ただ、問題は数値じゃないんですよ。御存知の通り今回東芝は再犯です。

2015年4月に発覚した不適切会計処理(=粉飾決算、東芝社内で言うところの「チャレンジ」)から始まり、2015年9月15日から2017年10月12日まで東証から特設注意市場銘柄へ指定されていた件と、金額の規模は違えども同様の話である可能性があります。

振り返って当時東芝が上場廃止になるべきだったのは、東証の上場廃止規定において主に

1,虚偽報告

2,有価証券報告書の提出遅延

3,債務超過

の点で明確に規定抵触していたからです。特に「1」の虚偽報告はかのホリエモンこと堀江貴文氏が率いていたライブドア(4753、マ)が2006年4月に東証の判断により上場廃止になった件と比較しても、どう違うのかを明確に説明できる方はいないでしょう。

ちなみにライブドアを葬ったのは当時の東証トップだった故西室泰三氏ですが、この人の前職は東芝のトップでして、東芝社長→東芝会長→東芝相談役→東証会長→日本郵政社長という経歴です。安倍晋三首相と深いつながりがあると言われた西室氏が長年東芝に院政を敷いたため、西室氏の顔色を伺うように会計数字を作るようになったのが「チャレンジ」の源流と言われています。そして東芝に忖度した東証と、奇しくもその年2015年に日本郵政を上場させた西室氏の軌跡はなんとも皮肉、というか不祥事ジャパンのオリジネーターとしてかなりの部分を背負うことになりました。しかし西室氏は2017年に一切の責任を問われることのないまま他界します。

明らかにギルティだった東芝を政治的判断で上場維持させた東証は以後、粉飾決算の事案に対して明らかに及び腰な態度を取るようになりました。粉飾(まがいの)事案はその後もちょくちょく発生しているにも関わらず、東証の主体的な判断で上場廃止を宣告された企業は2銘柄(エル・シー・エーHD、フード・プラネット)だけです。この2銘柄はもう企業の体をなしていなかったからしょうがないのですが。

 

東証はいまだ東芝の軛につながれたままなのです。

そういうわけで、今回の件はおそらく結果的には不問に付されると思います。形式的には再度特設注意市場指定という可能性はありますけど。

 

ただ私が心配しているのは東芝メモリ(現社名キオクシア)の上場問題です。

東芝が以前債務超過を解消するために売却を図った半導体子会社東芝メモリは結局、東芝が約60%の株式を売却しており、現時点では約49%を海外の投資ファンド(主にベインキャピタル)、10%弱をHOYA、残り40%強を東芝が引き続き保有しています。また東芝の持ち分のうち約3分の1を日本政府が実質的に議決権を保持しています。実は昨年2019年のうちにこのキオクシア株を東証1部にIPOする計画があり、予備申請はすでに終わっているとの報道もありました。半導体市況の悪化で公募価格が低くなってしまうとの予測があり上場はまだ発表されていません。

財務内容は

にある通り赤字決算の見込みですので当面東証1部に上場するのは難しい状況です。

まあそれなら当面は大丈夫か。今回の件も足を引っ張ってキオクシア上場は遅れてくれるといいな。

というのも正直言ってこのIPOは現場の人間としてはやりたくない。JDIにしてもルネサスにしても政府がらみで資金回収目的の上場は結果的にうまく行ったためしはほとんどないじゃないですか。日本郵政もそうですが、上場することが前提の企業って現場が数字を作ること (チャレンジすること)を暗黙で要求されるんですよ。結局責任は発覚時の経営者が辞任するだけで追求されることはないですし、その株式を買う事に関してだけは「自己責任」というわけです。

少なくとも時系列で遡って、経営者にしろ政府関係者にしろ固有名詞を特定して「誰が原因でこうなった」かを明確にする制度や風潮が必要なんじゃないかと思うんです。この国には。

 

なんか目的のための目的というか、責任逃れの言い訳をつくるための仕事ってとてもやりきれない気分になりませんか?