JDIへいちごからの増資、ホントに実行される

ジャパンディスプレイへの支援策がとうとう2020年1月31日に決定しています。

 

条件

1、いちごからの支援金額は約1,000億円。

「優先株B」 うち半分の500億円は議決権付転換社債型優先株。議決権比率は44%、ロックアップ付。転換価格は50円。

「優先株C」もう半分の500億円は議決権無しで1株75円で払込。同じく株式転換権付で転換価格は50円。

実行日は「B」が2020年3月26日、前日に開かれる臨時株主総会での承認が前提。

2、「優先株A」INCJ (旧産業革新機構)は現在保有するJDI向け債権の一部1,020億円分を優先株に転換 (デット・エクイティ・スワップ)する。一株100円。転換価格225円か時価の高い方、最低1年間のロックアップ付。いちごからの支援「B」実行が前提。

このスキームにより約1,000億円以上の債務超過は解消され、とりあえずの運転資金は確保される。

また希薄化率(ダイリュージョン)は291.83%

 

これで破綻回避にメドがつきました。2019年12月に入ってからの交渉開始なので実質1か月ほどの交渉期間で妥結した訳でして、かなりのスピードです。

経済産業省もマジでやれば出来るじゃん!

中華ファンドがやっぱりトンヅラした時にはダメかと思いましたが、いちごを引っ張り出したのはナイスプレーです。

とりあえずお疲れさんです!

 

経産省としてはOBの村上世彰氏は信用できないけど、日本贔屓のキャロンさんは外人でも信用できると踏んだわけですね?

いや、村上ファンドは債務超過の会社に手は出さないか。確かに粉飾しつつ債務超過である今のJDIを救済するって「火中の栗を拾う」どころか粉塵爆発に巻き込まれそうな案件ですものね。ホントにチャレンジャーというかスゴい度胸だと思います。

私としてはJDIといちごの契約書ではなく、INCJといちごの契約書が有るのならぜひ拝見したいのですが。疑う訳じゃないんですけど、やはりこの交渉期間の短かさについて何かしっくり来ない気がしてですね。もしあれば、で結構なんですが、INCJまたは経産省とのお約束や付帯事項、覚書等々を見たいなあ、と思っている次第です。

え? ないですか?

 

 だって粉飾疑惑ってもういいんですか?不問ですか?

そこんとこハッキリさせてくれないのにお金出しちゃっていいのかな?もちろんハッキリするまで待ってたら3月末のデットラインには間に合わないでしょうけど、私がもしいちごの金主ならもっと条件交渉をしてくれと要求すると思うんですよ。むしろ条件交渉しない人を信用できない。そんなヤツは投資家としてはダメです。がめつくて抜け目のない中華ファンドは最悪倒産してからもっと安く拾ってもいい、とくらいに思ってたんじゃないですかね。

 

それだけパッと見では、この妥結した条件はJDIにとってすごくよいと思えます。むしろ破綻寸前の会社にしては不自然なくらいにむちゃくちゃいい条件じゃないですか。希薄化率がリミット寸前の300%近くでも破綻するよりマシですからね。それとも経産省がよっぽど厳しくネゴしたのかもしれないです。まあ記者会見で出てきたキャロンさん、良い人そうな風貌でしたし?昔の新生銀行やシャープの事案でもみんな学習したはずですから。

 

知らんけど。

 

ともかくこれでやっとJDIは再建のスタートラインに立てるようになりました。次はガラクタとなっている白山工場の処分でしょうか。これも元はと言えば「アップルが建ててくれというから建てた」という話になってますが、確か建設着工の段階でアップルは「ごめん、iウォッチとか売れ行き悪いんだわ。やっぱ建てるの止めない?」とストップかけてはいるんですよね。JDI側は「地元から補助金あるしそれでもやるわ!もう引っ込みつかないっしょ!」と強行建設したいきさつがあったと記憶してます。白山工場はアップルやシャープに買い叩かれるかもですが、逆に支援の決まったこのタイミングでないと売りづらいですよね。売れれば900億円程度残っていたアップルへの建設資金借入もほぼチャラになりそうです。

 

これで「3月末には潰れない」ことはほぼ確定しましたが、液晶パネルをこのまま作っていてもおそらくはしばらくしてまたお金足りない、という事になってしまいます。これまでが実際そうだったわけですから。

じゃあどうすんの?というところが一番大事になってくるのですが、ここまでのリリースでは液晶以外の事業をどうするのかについてはほとんど言及されていません。

いちご側もキャロンさんの「JDIあげあげ!」なテンションでもそこんとこはスルーでしたよね。具体性ないです。

一時断念していたJOLEDの子会社化計画は再発動するのでしょうか?JOLEDはもともとソニーとパナソニック合弁の有機ELメーカーですが、やはり2015年に産業革新機構の主導でJDIも一部出資し、当時JDIが所有していた能美工場で有機ELの生産を行っています。産業革新機構はJDIの子会社にしてしまいたかったのですが、JDIの業績悪化により資金残高がダダ落ちになったため出来なくなったいきさつがあります。JOLEDの株主は75%がINCJですし、たしかまだJDIもいくらか出資比率が残ってませんでしたっけ?有機ELなら今後のスマホの主力部材としては需要がありそうです。これを新生JDIの収益の柱に育てていく腹積もりなのではないでしょうか?

 

でも中韓企業がすでにかなり先行して市場を押さえつつあるんですよねえ、有機ELも。

液晶パネルも昔は同じような話で、やはり国策で「日の丸連合」うんぬん...

なんか既視感を覚えますが気のせいですよね?