婚活屋IBJが仲人業者ツヴァイへ884円でTOB

2020年3月11日引け後にIBJ(6071、東1)ツヴァイ(2417、東2)への公開買付を発表しました。買付価格は884円、全株の買付を目指し、親会社のイオンは応募することを決めているためツヴァイは上場廃止になる見込みです。

買付への応募期間は明日3月12日から31営業日後の4月24日まで。買付代理人はみずほ証券

3月11日の引け値(発表前)は429円。12日は+80円ストップ高の509円となりました。連日のストップ高ののち3月18日までには公開買付価格にサヤ寄せする事になるでしょう。

IBJがこの買収にかける費用は約35億円で、みずほ銀行からの借り入れで賄うとのことです。最近は大企業の上場子会社の売却案件がたて続きに公表されていますね。金融機関も融資はもちろん資産運用部門やトレーディング部門が全く稼げていないので、今時分このような投資銀行部門の案件はとても貴重です。ブームになりつつある親子上場解消の流れは当面金融機関の食い扶持を賄ってくれると思います。この事案でわかるように、TOBは金融機関が営業して仕掛けてるんですよね。

 


ツヴァイの状況を見てみましょう。

 

 ツヴァイの業績はかなり傾いています。

買付価格の884円と前期末の決算を基準にして見てみましょう。

発行済株式数=3,963,600株

EPS=-49.08円

BPS=843.56円

PER=赤字

PBR=1.05倍

今期も赤字見通しですが既に2期前より赤字転落しています。しかし純資産は33.4億円、自己資本比率は83%と非常に健全です。基本的に設備投資などの必要のない業態ですし、サービス内容も会員費等は基本的に返還の必要はないものでしょうから商売自体はいいビジネスなんじゃないでしょうか。ツヴァイの純資産とほぼ同額かちょっと色を付けた程度の金額で買収ですから、お安いですがいい買い物と言えると思います。

経営陣は半数程度がイオン出身。とはいえ親会社から見切りをつけられた格好ですからイオンにそのまま戻れるかは分からないですが、イオングループ全体で70%近くの議決権を持っているため前田道路のようにツッパる意味も無いですし買収はすんなりと決まったようです。

対するIBJ側は純資産54億円弱のところに35億円の借金を起こすので自己資本比率は約44%から33%へと大幅に低下します。ここ数年で積極的にM&Aを繰り広げて本業周辺の事業拡大を行っているのですが、今回はひときわ大きな買い物になります。

ちなみに社名の「IBJ」とは「IT Bridal network of Japan」の頭文字とのことで、石坂茂社長の古巣である日本興業銀行の略称とは関係ないそうです。

このIBJですが、なかなかに美しい業績です。

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 IBJ 5年チャート  ヤフーファイナンスより

元々ツヴァイは2004年に上場した会社であり2012年に上場したIBJより男女マッチング業としては先達ですが、仲人的なスタイルから脱却できずにいました。折しも「〇〇×IT」というフレーズが流行ってきた中で、IBJのようなデータを大掛かりに活用したり周辺業務をパッケージして利益率を高めた新興勢力が幅を利かすようになります。とは言え業態はほぼ同業。こういった案件が出てくるのは婚活市場も飽和状態に近いという事なのかも知れません。

そりゃそうだよね。少子化で結婚適齢期の人口が絶対的に減っているし、今時の若者は結婚や出産を負債と感じる傾向があります。そういう社会の仕組みなんだから個々人が最適化戦略を取ればそういう答えが出るのは当たり前ですよね。別に彼ら彼女らに非はどこにも無いと思いますし、年齢別人口構成のいびつさや国家予算の年齢別配分をなんとかする以外にこの問題を解消する方法も無いんじゃないかと思ったり思わなかったり。まあともかく少しでも少子化を食い止めるビジネスは大変意義があると思います。