やさしく解説 株式投資のメリット② アフターコロナを見据えて

コロナ禍から株式市場が立ち直りつつあります。いや、なんなら今年2月半ばの下落前水準まで指呼の距離へ、すでに戻っていると言っても良いでしょう。

暴落は市場につきもの。みんながパニくって

「もうやだ!こんな含み損のストレスにはこれ以上耐えられない!」

「どこまで下がるんだよ!これは明日全部ブン投げないと維持率が割れちまう!」

「は?『追加保証金差し入れのお願い(追証)または強制決済の予告』って何だよ」

といった寸劇を見せて売る人が売った、その直後にたいてい大底はやってきます。

国内市場の日付で言えば3月19日が大底だったわけですね。この日はおそらく国内の地方銀行が保有しているもの、特に虎の子のJ-REITを投げ売りした日でした。

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今回の「コロナショック」暴落に際して、あくまで私のハダ感ですが、個人投資家はあまり売りに回ってはいなかったように思います。落ち着いていたというか諦めていたというか、ハナから甘く見ていたのかはわかりません。どちらかというと「どこで買ってやろうか」というファイト溢れる方々が多かったと思います。頼もしいことです。

おそらくは12年前のリーマンショックの事を覚えていたのでしょう。数年経ってみて、「ああ、あそこで買っておけばよかった。オレには勇気が無かっただけなんだ。勇気を持ってないオレだから今カネも持っていないんだ。」という苦い思い出ですね。もちろんあの時耐えきれずに売ってしまった人も同質の思い出のはずです。

 

今回のコロナ禍と前回の金融危機とを比べて、最大の共通点は「莫大な資金が世の中に放たれた」ことです。各国の財政出動と中央銀行の金融緩和によって大量のマネーが供給されました。2009年にはG20で約100兆円が供給されましたが、今回はすでに日本だけでそれを上回る財政出動が行われることになりました。米国においてはすでに4兆ドルを超える財政出動がなされています。ついでに言うとトランプ大統領はああいう人ですから選挙が近いこともあって、もっとでかいドンブリで「おかわり」を用意しているようです。前回の少なくとも数倍のマネーがだばだばと中央銀行の蛇口から吹き出している絵を想像して下さい。

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つまりやっている対策は同じですが、金額というか規模がケタ違いなのです。

違うのはスピード感も全く違います。前回の金融危機では欧米の金融機関を政府が税金で救済することが最も効果的な対策だったわけですが、それが政治的な理由で当初は行なうことが出来なかったのです。当時、特に米系の投資銀行の経営者や幹部たちは数億ドルにも及ぶ報酬を受け取っていることで有名でした。一般の国民は「あ”?やつらバクチ張ってべらぼーな給料をボッたくってたくせに、バクチで負けたら税金で救済しろってか!フザくんな!暴動起こすべ!」と一触即発の空気が漂って来ていました。ちなみに2008年とは当時の大統領ジョージ・W・ブッシュ2期目の最後の年ですでにやる気なし、支持率は過去50年でサイテーといった状態だったのです。そのため政府は誰も主導権を発揮できず、大統領の言うことに誰も耳を貸さず、議会は提出案に反対しかしない・・。ズルズルと無策なまま時間は過ぎ、2008年9月15日、リーマン・ブラザーズは64兆円の負債を抱えて破綻します。つまりサブプライムローンの焦げ付き問題を1年以上解決先送りした結果、もっと巨大な爆弾が撃発しちゃったのです。

それに比べて、コロナ対策に反対する人は基本的にいません。考え方に多少方向性の違いはあっても対策を行うこと自体には誰も反対はできないのが今回の状況です。カネをばらまくことに大義名分があるのです。

 

今回の暴落から意外と早く回復しつつある相場の原因は、「早急で巨額な資金供給」であると言えるでしょう。

最近よく、「これから景気がごっつ落ち込む言うてるのに、なんで株が上がっとるんや?訳わからんわ!」とご質問をいただきます。

ええ、わかってますよ。二番底で買いたいんでしょ?

でも多分、みんなそう思ってることです。

そういうとき、それは来ない。

今回気づいたことですが、いままでの歴史を見ても「景気と株価は必ずしもシンクロしない」ということです。

少なくともタイムラグはあるでしょうし、そのタイムラグはひょっとしたらとんでもなく長くなる可能性もあります。

 

そして本題ですが、今我々の目に見えている株価上昇、実は株が上がっているのでは無いのかもしれませんよ?

そう、金価格が地味に騰っていること、金利はさして上がってないのに社債の価格が下がっていることを考えてみて下さい。

これはひょっとして、現金の価値が下がっているのではないでしょうか?

そう、いわゆるインフレです。

例えて言うなら、水面に刺さっていた株価という杭がどんどん上に伸びてきているように見える現象です。それは単に水位が下がっているだけですが、少なくとも当面の間は川幅を拡げるようにして水自体の価値をどんどん薄めていく政策が続くわけです。

もし第2波が蔓延するようなことになればもっともっと大量の資金供給がおかわりされるでしょう。放出されたマネーは景気が回復しても金利を上げるか増税するかしない限り市場を満たし続けることになリます。

あれ?これってなんかバブリーな匂いじゃね?

そう、これはバブルが起こる前提条件を満たしています。勘違いしがちなのですが、景気が良いから株は上がるのではないのです。株が上がるから景気は良くなるのです。常に株価は景気の先行きを前もって織り込んでいる先行指数だからです。

またインフレに対して株式はアウトパフォームしやすい性質を持っています。

 

結論ですが、この株価上昇はインフレ発生とその逃避先としての株式買いという現象が起きているのではないか、ということです。

 ちなみに20世紀最大のパンデミックである1918年のスペイン風邪の大流行は、第一次世界大戦の終結と重なったタイミングの米国で起こりました。欧州戦線からの兵士復員は失業者増加につながり、疫病流行は経済の収縮を引き起こしたのです。そして当時としては空前の財政出動を行なった結果、米国では「黄金の20年代」「ジャズ・エイジ」と呼ばれる繁栄が訪れます。S・フィッツジェラルドの「華麗なるギャツビー」に描かれているような華やかでキラキラしていて、古い価値を葬り去る新しい世界観が、時代を上書きしていったのです。

そしてこのバブルは制御を失ったまま1929年の世界恐慌まで約10年もの長きに渡り暴走を続けました。

 

 

今回はかなり大雑把にマクロ経済的な話と株式のメリットを述べましたが、次回は具体的にどのような戦略を取るべきか、という内容にしたいと思います。