新規上場ヒューマンクリエイションHD はどんな会社?

2021年3月16日 (火)マザーズへIPOするヒューマンクリエイションHD (3716)について

 


主な業務は人材派遣業。ITエンジニアをシステムインテグレーターなどに派遣する業務を行っています。同社は事業部門としての4つの子会社を束ねる持株会社として今回新規上場を行います。子会社の名称は

1、ブレーンナレッジシステムズ 

2、シー・エル・エス  

3、アセットコンサルティングフォース 

4、セイリング 

となっています。このうちSIにおける基本設計・詳細設計を担う人材を派遣するブレーンナレッジ社が売上の65%程度を占めています。

主な取引先は日立製作所、日鉄ソリューションズ、鈴与シンワート、富士ソフト、富士通アドバンストエンジニアリング、日本郵政インフォメーションテクノロジー、シーエーシー、システムコーディネイト、NTTデータ カスタマサービス、フジミック新潟、大和ソフトウェアリサーチ、データ・マネージメント、IT働楽研究所、キヤノン電子テクノロジーなどです。

2016年設立のかなり若い会社ではありますが、創業自体は銀行などへシステムを納入する同社の前身「バンキング・システムズ」が設立された1974年からです。

現在の株主は約94.21%が投資ファンド運営のリサ・パートナーズ (2011年まで東1上場、NECキャピタルに買収された)が出資するファンドです。上場時に15%弱の名義をリサパーに変えて株主に残るとは言え、今回のIPOは実質的にリサパーのエグジット案件と言えます。

代表取締役CEOの富永邦昭氏は立教大学出身で1970年8月15日生まれの51歳。元々は化粧品大手のポーラで事業部長として上場やM&Aに関わる仕事をしてきた方で、2016年に同社が設立されたときにスカウトされて就任したそうです。また取締役管理本部長の河邉貴善氏、取締役経営企画本部長の渡部峻介氏もポーラ出身で富永氏の就任後に入社しています。おそらくは富永氏の引きがあったのでしょう。また社外取締役の公認会計士である滝澤康之はリサ・パートナーズのプロパーなのでお目付け役的なポジションです。

 

 業績と将来予測

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EDINET提出書類 株式会社ヒューマンクリエイションホールディングス(E36420)有価証券届出書(新規公開時)より

 

人材派遣業は「元手がかからない」事業です。そのため利益率は高く、ROEも前期は34%程度となかなか割のいい商売です。おそらく事業分野が専門性と成長性のあるIT分野への人材派遣という、単価と参入障壁の高さによって差別化が図られているのでしょう。売上、利益ともに成長性はぼちぼちといった印象であり、まあリサパーが持ち株の大半を売り払うのが今、と察するような成長ステージでの上場です。受注先の企業に送り込む「人財」という商品をどれだけ仕入れられるかが今後の業績のカギになると思います。

また、上場後は配当性向を利益額の30%程度としているため、本2021年9月期の1株純利益予想165.24円から考えると50円程度の配当予想になります。公募の仮条件上限からすると予想配当利回りは2.3%くらいでしょうか。

 

IPOに際しての株式数関連データと初値形成

 価格仮条件 2020円~2120円(価格決定は3月8日)

上場時発行済み株数 1,898,750株

 公開株数 1,819,500株(公募50,000株、売り出し1,569,400株、オーバーアロットメント200,100株)

調達金額は約38.6億円

主幹事証券はSMBC日興証券

上記の通り、増資分が低い比率である事やオファリング・レシオが95%とバカ高い事を考慮すると需給関係は弱いと思われます。公開株数と株価を掛けた市場から吸い上げる調達金額38.6億円はあまり大きくはないものの、日程に後から乗っかってきた同時上場のウイングアーク1st(4432、東1)がかなりの大型案件であるために証券会社の募集は苦戦が予想されます。初値は案外早く付いてしまうか、またはウイングアークの初値形成に影響される可能性があります。ただ仮条件価格の上限2,120円と今期予想EPS165.24円から計算したPER12.83倍は同業他社などと比べてもお安いとは思います。さらに2月26日に上場したcoly(4175、マ)の上場がすでに終了して2週間以上間が開いているため待機資金がこちらに向かう可能性もあり案外初値は無難かもしれません。

初値がむやみに高くならなければ、2Q以降の決算内容次第ではありますがセカンダリーで市場買付を行ってじっくり保有するほうが良い銘柄のような気もします。