掉尾の一振(とうびのいっしん)  日経平均は来年35年ぶり高値を超えるか

今から34年前、1989年12月29日(金)は日経平均株価が史上最高値の38,915円87銭をつけた日です。(終値ベース、場中最高値は38,957.44円)

年末から年始にかけて株価が上昇するアノマリーを「掉尾の一振」と呼びます。

1989年12月の株価ほどにこの言葉を体現した年は今までなかった、と言えますが、来年2024年が「それが今年だ」と言える年になったらどうですか?

 

ちなみに「バブル時の高値をすでに更新した」と勘違いしてる人をたまに見かけますが、よく言われている「バブルの最高値」とはつまり「2番目に高い」という意味で、マスメディアのミスリードに引っかからないようにしましょう。まだですよ。

 

この1980年代当時は年内最終売買日である「大納会」は午前中のみの取引で終了し、なおかつ12月27日くらいで年内締めしていた時代だったそうですが、この1989年に完全週休二日制が施行されたために基本12月30日が大納会の日となったそうです。なんでも東証会員の多数を占めていた地場中小証券会社より、「営業日が少なくなって食っていけなくなる」と文句が出たからという理由みたいですね。

 

ちなみに日本証券取引所は来年2024年11月5日から取引時間を今より30分延長して15:30を後場引けとすることを決めています。

また、年明け1月から今まで数字4ケタだった証券コードにアルファベットが入ることになっています。既存銘柄のコードはそのまま変わりませんが、新たに上場する銘柄には「000A」とかのコードになるそうですね。

4ケタのコードは基本使い回しをしないので上場廃止などになると欠番となり、そう遠くないうちに9999個の枠が枯渇しそうだからでしょう。

 

1989年末の日経平均株価過去最高値は、言うまでもなく日本のバブル期の最終局面であり、ほぼ平成時代と時期が被る「失われた30年」の始まりでもあるわけです。

 

なぜバブルは発生し、そして崩壊したのか

 

「バブルの時は定期預金に10年入れとけば倍になったんだよ。いい時代だった。」

とか言ってるじいさんばあさんをたまに見かけます、が、それは勘違いで事実ではありません。

そんなに金利が高かったのは1991年くらいのことで、日経平均が大暴落を始めてから2年近く後のことです。

 

バブル崩壊の引き金は、直接的には金利引き上げなのです。

そもそもバブル経済とは名前の通り、実体が伴わないのに膨らんだ経済状態のことで、「膨らみすぎ」という前提条件が必要です。

1980年代中盤の日本は日米貿易摩擦という問題を抱えていました。

昔の映像でデトロイトあたりの自動車工場の労働者が、日本車をハンマーでブッ壊すようなパフォーマンスを見たことありませんか?

www.youtube.com

当時の日本は対米で巨額の貿易黒字が発生していて、アメリカ側は、

「ちょ!日本ズルくね?報復かけられんのイヤなら自主的に何とかするよね?

ねえ?(圧)」

日本は、

「さーせん!何とかしますんで。とりま『内需拡大』って政策やって自分とこでなるべく消費するようにしますから。国内景気アゲアゲにするために金利低めのまんま固定しときます。」

みたいな話です。

つまり本来やらなきゃだった小まめな金利引き上げをしなかったせいで、膨らんだ経済を暴走させちゃったのが1980年代後半のバブル経済の原因であり、もう制御不能になってから遅まきの急激な金利引き上げでメルトダウンしたのがバブル崩壊というわけです。

 

この教訓を他国の中央銀行は当然「やっちゃダメな最悪の事例」として認識しているので、昨今はコロナ禍による大量の通貨発行の結果起きちゃったインフレ(通貨価値の下落)の暴走を何とかするために、FRBは金利をガンガン上げて必死の制御を行いました。先日2023年12月のFOMCは、

「お?パウエルくん上手くやってくれてんじゃん、もう金利下げても大丈夫じゃね?」

と見る人がだいたい安心できる状況を確認できた、ということなんじゃないでしょうか。

まあ景気や業績も関係あるっちゃあるけど、結局のところ「株価は金利が8割」ってことでしょう。

そりゃ借金のある企業は支払いが増えて黒字減りますし、そもそもそれだけ普通金利高いなら、みんな株なんか買わんでも預金で充分とか思っちゃうでしょ。

 

来年2024年の見通し

 

振り返って日本の国内市場の来年見通しですが、2024年はかなりの好条件が揃っていると思います。

ひょっとして1989年の日経平均史上最高値を更新するのでは?くらいの期待感を感じます。

その理由として

第一に、高値を追っている米国株に比べて日本株は割安だという見方があります。インバウンドで訪日外国人がいっぱいですが、これは要するに「ニッポン安すぎ天国」だから来てるわけじゃないですか?ほとんどの他国から見れば日本の物価もサービスもむっちゃ安く感じるでしょう。たしかに日本株も上がってると言えば上がっちゃいますが、円安のせいで外国人から見れば、ドル建て日経平均は「むしろ下がってる」ようにさえ見えます。

第二に、2023年3月末に日本証券取引所は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」というのを公表しました。お願いとか言いつつ内容はほぼ命令に近いのですが、むちゃくちゃ意訳すると、

「おまえらキャッシュ溜め込みすぎやねん!インフレになっとんのは知っとるよな?後生大事にあんたらが抱え込んどる現金、腐り始めとんねんで?」

「解散価値のPBRが1倍以下の会社とか存在価値ないで?割れとるとこは3ヶ月おきに始末書書いてもらうで!」

的なことをおっしゃってるという理解ができます。

そのせいか最近やたらに公開買付け(TOB)のニュースが多いじゃないですか。大正製薬とかベネッセとか。嫌気の差した創業者が面倒になって上場やめますっていう事なんですよね。公開買付けの価格がBPS (一株純資産、いわゆる解散価値)以下というのはどうなのかとも思うんですが、結果はどうあれ株価が押し上げられているのはたしかです。

第三に、中国から逃げ出した資本が日本に流入しているのではとの観測があります。

最近アステラス製薬の現地法人社員がよく分からない「スパイ罪」とかで身柄拘束されてしまう、そんなことが中国ではよく起きています。なんかアッチの国々は法律や制度がすごく恣意的というか理解できないじゃないですか。昔はそれでも人件費安いから中国に工場作る意味はあったんですが、いま別に安くないよね?じゃあ意味ないよね。

っていうか今や中国人すら脱出してるわけじゃないすか。

で、中国から引き揚げた資本や工場どこに移す?という問題になります。まあ価値観が同じで、人件費が一周回って安くなってる、さらに治安はむちゃくちゃ良くて、「明日から本気出す!」と言ってる国がある。消去法ですがここは日本しかないんじゃない?となっているわけです。

熊本県菊陽町には国内のメーカーだけでなく、台湾セミコンダクター社など海外のメーカーが工場建てまくりの最中でして、なんでも工場の食堂のパートさん時給が3,000円くらいになってるとか。ちょっと熊本行ってくる!

「熊本 時給」でググると時給3000円がサジェストされますね

つまり日本が再び世界の工場として復活するかもな情勢なわけです。それは腰の入った景気回復要因になります。

 

それにしても35年ですよ?35年!

何ならボクら日本人は、「もう生きている間に日経平均の高値更新を見ることはないのかも」くらいまで思い込んでいたのかも知れません。

 

でも来年、そうじゃなくなったら?

 

もし2024年、日経平均が38,915円に接近してきたら、ぜひ日経平均寄与度の高い銘柄ファストリでもソフトバンクGでも、何なら日経ETFでも良いんですが、とにかく買い注文を入れたい。

歴史を更新する注文を出したい。この買い注文が歴史の新たなページを刻むと思えば、むしろ高値を掴むことにこそ意味があるんです。

そしてもし新たな日経平均最高値を更新したら、ひとしおの感慨を持って次の高値を待つことが出来るのではないでしょうか。