かんぽ生命の謝罪会見 2019年7月10日(夕会)

とある金融機関の会議室での会話(あくまでフィクションです。)

 

反町課長代理:

おつかれさんです!今日から白楽課長が休暇な。来週までオレが仕切りますんでよろしく!

小杉、冨山、日吉:

よろしくです~

反町:

それじゃあ今日の国内マーケットについて小杉から発言たのむ。

小杉:

はい、まずは16:00から会見のあったかんぽ生命の件ですね。まあやっぱり謝罪会見だったんですけど、主に「保険の二重契約」などの意味のない商品販売が行なわれていたこと、そしてそれも含めて適合性にそぐわない販売行為が相当数見つかった、ということですね。

我々証券会社として影響を受けるのは4月に公募売出し(FO)で引き受けて販売した先でしょう。公募価格は2,375円ですから今日の引け値の1,918円まで457円下ってるね。ざっと20%の含み損です。今日中に販売先には状況報告を漏らさずカバーしておくべきだと思います。

 日吉:

投げたほうがいいですか?

小杉:

はっきり言うと売ったほうがいいと思う。本来なら今日会見をするってニュースが出た時に売るべきだった。どうせいい内容の会見じゃないことは分かってたわけだし。最悪の場合、営業停止処分を受けるなんて事になったら株価は当分戻らないんじゃないかな。かんぽ生命にすればこれまで何年もやってきた仕事が否定された上に、補償を行うことになると損失がどれくらいになるかはしばらくわからないだろう。少なくともこういった不祥事を起こした銘柄に関しては機関投資家はまず売らなきゃならないからな。

冨山:

いつからこんな話になっちゃったんでしたっけ?

小杉:

報道ベースで言ったら6月24日の朝日新聞で出てるのが発端かな?内容は日経新聞で読んだけど。この記事かな。

 

反町:

でもよ、かんぽ生命っていうか日本郵政グループの問題って結構前から話には上がってたぞ。問題の本質は実際に販売している郵便局の体制だってNHKが報道してたからな。えーと、これだ!


 これ去年の4月の報道だろ?郵便局員が「ノルマ」で激詰めされて死にそうになってる内容だよ。現場の郵便職員の内部告発が相当数あるみたいだったけど、結局1年経っても状況はあんまり変わってねえな。郵便局員って悲惨だよね。年賀はがきとかの「自爆営業」で何10万円も出費を強制されたりするのに給料がかなり安いだろ。典型的なブラック企業にしか見えねえよ。「ノルマ営業の見直しをします」ってさっきの会見で言ってはいたけどさ、去年も言ってたよなあ?

日吉:

年末までに日本郵政の公募売出しがあるんじゃないか、って聞きましたけどどうなんでしょう?わたし正直売れる自信がまったくないんですけど。

冨山:

僕もですよ。そういえば野村證券って5月の情報漏えいの件であちこちの主幹事案件から外されてますけど、あれってかえってよかったんじゃないかって思いますよ。正直うらやましい!ウチも郵政の幹事から外してもらえないですかねえ?

反町:

お前が何か「お漏らし」したら外してくれるんじゃねえの?やってくれよ。

冨山:

イヤですよ~。それよりかんぽ生命はどこらへんが落とし所になるんですかねえ?

小杉:

おそらく業務改善命令で終わるんじゃない?個人的にはスルガ銀行みたいに業務停止命令は出て然るべきとは思うけどね。少なくとも第三者委員会の設置と調査はあるべきだ。スルガ銀の調査報告書はパワハラの章が赤裸々で20世紀の営業部屋って雰囲気が秀逸だったけど、それを超える力作が期待できるねえ。

スルガ銀も日本郵政グループも共通して言える、というか我々も心あたりがあると思うけど、日本の金融機関って構造的な問題があるのに目をそらしてるんだよね。経営側が根拠のよくわからないノルマを設定して、ただ「黙ってやれ!なんで出来ないんだ!出来るまでやれ!」としか言わない。どうやったら出来るかっていう方法論は現場を知らないから当然中身がないしさ。でも反抗したら徹底的にいじめられる。まともな人や有能な人は辞めちゃうからどんどん一人あたりのノルマは増えていくよね。結局達成率が下って給料は増えない、むしろ下がる。人手不足って言ってる割には従業員を雑に扱うから辞めたもん勝ちになっちゃうんだよ。

日吉:

その上AIだフィンテックだとかで私たちは要らなくなるとか言い出すしね。実際残業代減ったせいでわたし手取りが年収ベースで30万円は減ってるんですけど?

反町:

いつから身の上話になっちまったんだ?次の件行こうか…