日本KFCが米カーライルの公開買付けにより上場廃止へ

日本KFC (9873、日本ケンタッキー・フライド・チキン)にTOBが実施されることになりました。2024年5月20日引け後の発表です。成立すれば上場廃止の見込みです。

株式会社クリスピーによる日本KFCホールディングス株式会社(証券コード:9873)の普通株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ

公開買付価格は6,500円、2024年5月20日の終値5,400円に対して約20%のプレミアム。

買付予定の株数は14,547,681株、下限で7,073,300株。

本件の買収金額は約1,300億円。

日程は5月21日から7月9日までの36営業日。

代理人は大和証券が行います。

 

買付者であるカーライルはアメリカの投資ファンドで、日本ではこれまでに携帯通信のウィルコム(現ワイモバイル)、住宅ローン屋のアルヒ、居酒屋華の舞を運営するチムニーなど、企業再生やMBOなどにに資金を出して整えたあと転売するところとして実績があります。

 

BPS(一株純資産)は直近2024年3月期で1394.40円ですし、大正製薬みたいな食い逃げMBOと違ってまあ十分に妥当な買付価格と言って良いでしょう。

 

株主構成

発行済株式数は22,423,761株で、うち三菱商事が現時点で35%を保有する筆頭株主です。三菱商事は1970年にケンタッキーが日本進出した時以来、1990年8月に当時の東証2部への上場を経て、これまでずっと資本的、人的に面倒を見てきましたが、今回のTOB成立後に別途応じて全ての株を手放すそうです。上記の買付予定株数の下限は三菱商事の持分と合わせて66%を超えるようにして、仮に反対者が出てきたとしても議決権で3分の2以上あれば押し切れるようにする計算です。

 

2024年2月28日くらいに、三菱商事が売却を検討してるという報道がすでに出てました。

http://三菱商事、迫られた日本KFC売却 資本効率改善が急務:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC285ST0Y4A220C2000000/

2024年2月28日 日経新聞より

入札で売却先を選定するという話だったので、どうせどこかの投資ファンドだろうとは思ってましたが。

ただ現時点で今年11月末に米国本社とのフランチャイズ契約の期限が来るのに更新の合意がまだなのだそうです。

 

2024/4/26 日経新聞より

株価はこの時点で3,635円でしたが、このニュースで火がつき株価は3ヶ月足らずでずいぶんと上昇しました。TOBがかかる前提であとは日程と買付価格だけが決まってない状態みたいなものですから。

 

世界初のフランチャイズはケンタッキー・フライド・チキンなのだそうです。ちなみにピザハットも日本KFCが運営しています。

 

日本マクドナルドもそうですが、基本的に外国企業の現地法人ですから契約上は海外展開できないことがほとんど。そのため国内のみでの成長性には限界があり、いずれ売上も利益も頭打ちになる宿命です。

よく考えたら三菱商事はじめ日本の総合商社がそもそも投資ファンドに近い業態になってますよね。

儲けの利幅が少ない商売からは手を引き、よりボロ儲けになる事業にリソースをぶち込むのがビジネスの基本ですから。そこの忠実さをバフェット爺に買われたのでしょう。

 

M&Aは投資ファンドや上場企業にとって手持ちのキャッシュを潰すかなり有効な手段です。

それはインフレ経済下ではキャッシュは時間経過とともに価値が下がるからです。長年のデフレ脳に慣れきった感覚ではなかなかピンと来ないでしょうけど。

つまりキャッシュはババ抜きのジョーカーになってしまったという事です。

「保有株を高く買ってくれてうれしい!」と喜んでる場合じゃなく、

「こっから利益が伸びていく金の卵をはした金で取り上げられた」と怒るべき。税金払って別の投資先を探さなきゃならないわけですから。