マッチングサービス「with」運営のイグニス MBOで上場廃止へ TOB価格3,000円

イグニスTOBの概要 MBOとスクイーズ・アウト

 イグニス(3689、マザーズ)を代表取締役の銭錕氏、代表取締役CTO(最高技術責任者)の鈴木貴明氏がアメリカの投資会社ベインキャピタルの支援でマネジメント・バイアウトすることが2021年3月5日の15:30に公表されました。

公開買付価格は3,000円ちょうど。受付期間は4月19日までの31営業日、代理人は野村證券。買付株数は下限、上限なしで既存株主約48%の賛同が見込まれるため上場廃止の見込みです。上記の大株主2名は引き続き同社の経営を続けるとのことです。

イグニスはどんな会社?

同社はサイバーエージェント出身の2人が2010年5月31日に設立した会社です。当初はスマートフォン向けアプリの企画開発を手がける会社で、「妄想電話」「AKB48電話」「ほくとドラゴン」「メガスマッシュ」「でめみん」などのアプリやスマホゲームをリリースしてきました。

2014年7月15日にマザーズ上場、公募価格は1,900円、初値は8,400円で付きました。

業績はあまり芳しくなく、5期連続の最終赤字が続いています。

その中で2015年9月にスタートした新事業、恋愛・婚活マッチングサービスの「with」が好調で、現在業績の伸び悩みに苦しむ同社の収益源へ成長しました。

本案件の焦点はもはや主力となったマッチングサービス「with」事業からほかの株主をスクイーズ・アウトするため、と見えなくもないです。

 

業績と株価

上記の通り連結業績に関しては良くないわけですが、この類の会社は自己資本比率は高い例が多く、同社も直近決算でも54.47%をキープしています。前期EPS(1株利益)はー65.32円でしたがBPS(1株純資産)は171.37円あります。ただこのままのペースでいけば近いうちに自己資本は枯渇することも予想され、よく見かける第三者割当増資や新株予約券の乱発などのじゃぶじゃぶダイリュージュン(希薄化)が行われてしまう予感もあったと思います。本案件はいい意味でそれを回避する目的もあるのかもしれません。

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(株)イグニス【3689】:チャート - Yahoo!ファイナンス

本件の発表された2021年3月5日の引け値は1,842円でした。この株価に対するプレミアムは60%を超えます。

既存株主は以下の野村証券以外のほとんどが身内とお友達であるため本案件に賛同済みのようです。議決権ベースで48%ほどが賛同するためTOB自体の成立する可能性は高いと思われます。

 

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イグニス 2020年9月期 有価証券報告書 より抜粋

TOB価格も過去の株価からすれば、初値で買って固執していた人以外は救われる感じですし、業績見通しを想像すればまあ妥当な条件と思います。上場廃止になった後はそろそろ飽和状態になりそうなマッチング事業を売り飛ばすも自由ですしね。