TATERU  営業停止で焼け跡から再度炎上  これまでの経緯

「不動産✕IT」のキャッチフレーズで成長を続けていたアパート開発業者のTATERU(1435、東証1部)が2019年6月18日の日経新聞で、国土交通省が宅建業法に基づき業務停止命令の発動を検討しているとの報道がなされました。TATERUは寄り付きから大幅安で始まり大引けで-43円(ー18.61%)の188円と本日の値下がり率1位となりました。今回はTATERUについて説明します。


TATERUとはどんな銘柄か

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TATERUは2015年12月3日、東証マザーズに上場しました。上場時の社名は「インベスターズクラウド」といい、現代表の古木大咲氏が福岡市にて25歳の時に創業した会社です。2006年創業ですので9年間で事業拡大し上場まで持っていったということになります。個人創業の会社が9年で上場というのは当時は珍しかったと思います。上場の主幹事はSBI証券、公募価格は1,870円で初値は3,615円と倍近い値段で取引が開始されました。正直社名からすると不動産屋というより投資会社のようなイメージしか湧きませんでしたが、同じ福岡のシノケン(8909、JQS)とほぼ同業であることがわかりました。個人に投資用アパートの建設を提案する事業です。上場後も株価は順調に上昇を続け、翌2016年4月には16,250円と半年足らずで初値の4倍を突破します。


金融庁の方針

TATERUが上場する少し前の2015年11月に、時事通信から「不動産向け融資、バブル期並み=金融庁、地銀の監視強化」という報道が出ました。政府の低金利政策によってただでさえ貸出先の少ない地方銀行が、不動産業者の個人向けアパートローンなどに貸出を膨らませすぎている、と問題視しているという内容です。そもそも人口が減りだしている日本国内でアパートやマンションがボコスカ建設されているけど、そんなに需要があるの?供給過剰なのでは?という疑念はもともとあったのです。しかしTATERUは雲行きが変わりつつある中でも順調に業績を伸ばしていきました。

かぼちゃの馬車事件とスルガ銀行問題

2017年秋口、スルガ銀行が突然アパートなどの不動産向け融資を絞り始めます。おそらく金融庁の監査・指導があったのでしょう。それまで神奈川県内に土地を持っている顧客より、「スルガ銀が融資を付けるから投資用の物件を建てましょう!上モノがあれば評価が下がるので相続対策になりますから!」という不動産業者の営業がしつこいほど来ているという話をよく聞きました。あまりにしつこいので警察を呼んだとおっしゃってました。話だけ聞いた人によると、横浜駅近くのスルガ銀行の支店を紹介すると言われたそうです。ところが2017年10月、「かぼちゃの馬車」問題が発生します。「かぼちゃの馬車」とはスマートデイズという不動産業者の物件シリーズ名で、そこそこ高給取りのサラリーマンなどがシェアハウスと呼ばれる物件を、この業者の勧誘で土地と込みで購入し、資金を全額スルガ銀行から融資を受けて賄うというスキームです。引いた融資は物件の入居者からの家賃で数十年かけて返済していくが、その間はスマートデイズ社が家賃保証をするので安心ですよというセールストークでした。このようなスキームを「サブリース」と呼びます。スマートデイズ社は確信犯的に、部屋が埋まる見込みの少ない実は収益性の低い物件を顧客に買う契約をさせ、建設を請負い、建設業者に丸投げして安普請の上モノを建てさせた上で業者からキックバックを受け取るという詐欺的商法を繰り返していました。ところが家賃保証をするためには新規案件(新しいカモ)からお金を引っ張らないと資金が回らないビジネスモデルです。スルガ銀行が融資を締めたためにそれまで保証していた家賃をスマートデイズ社は払いきれなくなります。ちなみにスマートデイズ社の創業者である大地幸則氏はレオパレス出身です。



レオパレス問題

2017年12月26日にテレビ東京の人気番組である「ガイアの夜明け」で、「マネーの魔力」というタイトルでレオパレスが登場しました。当時の社長である深山英世氏は、インタビューを受け始めたときは喜色満面だったのです。しかし途中で都合の悪い内容の内部文書を見せられ、説明を求められてからの顔色の変わり方、態度の変化は一見の価値があります。

レオパレスはサブリース業の大手で、それ以前からあまり報道されていなかったものの、非常に問題があると言われていた会社です。オーナーからの訴訟が多く、入居者からは「壁が薄くて隣の部屋の音が筒抜け」と有名でした。この問題がテレビで報道されなかったのはレオパレスがテレビCMを流していたため各局に広告主として影響力を持っていたためだと言われています。実はかつてレオパレスは「ガイアの夜明け」のスポンサーとしてCMを出していたと知ったときは胸が熱くなりました。

ともかく、レオパレス問題はこのテレビ東京のスクープが発端になり表面化していきます。


「サブリース」崩壊

2018年1月23日、不動産業界紙でスマートデイズからの家賃振込みが停止しているとの記事が掲載されました。日経新聞など全国紙がスルガ銀行との関係を伝え始め、スルガ銀の株価が暴落を始めます。

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まだこの時点ではTATERUには影響が見られません。2018年4月6日に株価が最高値の2,549円(上場して以降株式分割を2回、都合1株を10株に分割しているため)を付けます。上場初値からすれば7倍、公募価格から見れば14倍近い上昇を、わずか2年ちょっとの間で達成するのです。

2018年5月29日、レオパレスが施工の不備について記者会見を行いました。レオパレスの施工した全棟を調査することを発表しますが、それまでリーマンショック以降の最高値1,023円を付けていたレオパレスの株価も翌営業日の6月1日から暴落を始めます。個人向け不動産投資業者、ひいては業界全体への不信感、疑念が市場を覆い出していきました。

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「誠に遺憾ながら、そのような事実がございました。」

2018年8月31日の21時40分、東証適時開示情報に、TATERUより「本日の一部報道について」との開示が出されました。日経ほか各紙からこの日の夕方に、TATERUにもスマートデイズ同様の不正があったと報道されたのです。

「スマートデイズと同様の不正」とは何か?スマートデイズは顧客がスルガ銀行から融資を受ける際に、融資審査書類の偽造を行っていたのです。通常住宅ローンなどの融資を受ける際には、買付予定物件の80%程度しか融資は下りません。頭金を入れる必要があるのです。100%融資の事を「フルローン」と俗に呼びますが、平たく言えばフルローンはバックレ率が高いのです。もし住宅ローンを借り手が返せなくなりそうな状況になったとしても、銀行は家を担保に取っています。返せないなら取り上げて売却しますが、売却価格が融資残より低くしか売れないとなると銀行は損をします。万が一の売却価格より融資残のほうが低くなるようなバッファーを作るために、頭金を入れないと融資しないというのが基本なのです。スマートデイズはポッと出の怪しげな業者だったので、まともな投資家には相手にされませんでした。そこでスマートデイズは「スマートな」商売を編み出したのです。スレていない素人相手にアパート、やシェアハウス経営を持ちかけます。「そんなお金はないよ」との断り文句に対して、「スルガ銀行ならフルローンでイケますよ。手ガネなしでも出来て、毎月の家賃がもらえるんですよ。今のご収入に上乗せで不動産収入があったらもっといい生活が出来ますよ。」と甘い言葉でその気にさせました。
スルガ銀行はそれでも一応は銀行ですから規定の通りの融資基準があります。やはりフルローンはご法度です。でも融資実績は欲しい。現場の営業担当はどうしても期中実績が欲しい(このあたりの話は別の機会に書きます)。なのでスマート社の社員に良からぬことを指南しました。「エビデンス(融資関係書類)の改ざん」です。具体的にはスマートデイズが掴まえた物件購入予定者が、融資申込者としてスルガ銀行に提出する他行の預金通帳のコピーに数字を書き足して残高を水増ししたのです。通常はコピーではダメなのですがスルガ銀行だけはコピーでOKだったそうです。
更に、物件購入価格の改ざんも行われました。本当は8,000万円の物件購入契約を、まず1億円として契約書を作成します。融資が8,000万円下りたら再度契約書を作り直して8,000万円フルローン購入となるわけです。これを二重契約といいます。もっともその物件の価値は8,000万どころか半分程度の価値しか無いようなものも多かったようです。


このようなガバガバな行為をTATERUもやっている、との報道に対して、急いで社内調査を数時間で行なった結果の「遺憾ながら事実でございました。」だったのでしょう。この発表までの数時間のTATERU社内の空気、想像してみてください。彼らは金曜の夜をどんな気持ちで過ごしたのでしょう。


株価崩落

週明けの営業日、2018年9月3日の寄付きから、TATERUの株は売り気配で始まりました。
前日の終値1,606円に対して-400円ストップ安で終了します。売りたい人がほとんど売却できずにこの日は終わりました。その翌日もストップ安となり、8営業日後である9月12日には330円の安値を付けます。問題発覚から2週間も経たないうちに、隆盛を極めた株価は80%近くも下落したのです。古木社長はこの暴落で保有株の価値を480億円分減らした事になります。


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この件以来、TATERUは窮地に追い込まれて行きます。スマートデイズの資金供給元だったスルガ銀行に対して、TATERUの資金源は西京銀行でした。



次回はその後から現在までの推移と見通しについて書いていきます。