粉飾の先輩ディー・エル・イーの特設注意解除とユー・エム・シー・エレクの生きる道

DLE (3686、東1)が2020年2月22付で特設注意銘柄の指定解除となりました。2018年12月28日に指定されて以来約、約1年2ヶ月で解除されたことになります。

特設注意市場銘柄の指定解除:(株)ディー・エル・イー | 日本取引所グループ

今回はこの特設注意銘柄に現在指定されているユー・エム・シー・エレクトロニクス(6615、東1)とDLEの事例を比較して見通しを考察したいと思います。

 

DLEが行った悪事

・2014年に上場前からの粉飾決算に基づきマザーズ上場

・2018年に発覚するまで売上、利益の架空計上

・2016年に粉飾前提でマザーズから東1への鞍替

 

DLEが行った改善

・過年度決算の訂正

・東証へ3360万円、金融庁へ1億3540万円の課徴金支払い

・代表取締役CEO椎木氏の平取降格と代表権返上

・取締役CFO川島氏の退任

・朝日放送へ第三者割当増資と役員受入 (子会社化)

 

UMCエレクが行った悪事

・2016年に上場前からの粉飾決算に基づき東1上場

・2018年に粉飾した決算書に基づき公募増資

・2019年に発覚するまで売上、利益の架空計上

 

UMCエレク が行った改善

・過年度決算の訂正

・課徴金4800万円の支払い

 ・代表取締役社長内山氏の平取降格と代表権返上

 ・副社長柏木氏の平取降格と辞任勧告(平取留任中)

・資本、財務に関しては手つかず

 

ディー・エル・イーとユー・エム・シー・エレクとの現状の違いはご覧の通り、①役員構成 ②資本内容 の点です。

①役員構成

粉飾を主導したとされる主役級の役員はどちらも2名います。

トップの平取降格はどちらもしている一方的でナンバー2に関してはディー・エル・イーの場合会社を去り、ユー・エム・シー・エレクトロニクスの場合は平取に留まったままです。また、ディー・エル・イーは朝日放送から役員を受け入れた結果、メンツはかなり刷新されたようには見えます。一方、ユー・エム・シー・エレクトロニクスは役職は入れ替えたもののメンツは全く変わっていません。

②資本内容

ディー・エル・イーは第三者割当増資により朝日放送の傘下に入ったため、財務的には問題ない状況にはなっています。当面は赤字が続いたとしてもすぐに経営危機が発生する事はないでしょう。また、椎木氏の議決権は大幅に低下したため、当面トップへの返り咲きは難しいでしょう。

一方、ユー・エム・シー・エレクトロニクスの場合は、訂正した決算により自己資本や業績が大きく低下したまま全くの手つかずです。

 

ディー・エル・イーが導く結論

上場前から粉飾決算を行っても課徴金だけでほとんど「お咎めなし」という処分です。予想してはいましたが本当に大甘というか、投資家に「粉飾した会社の株を買っちゃったのも自己責任でおなしゃーす!」と言いたげな東証の寛大さには呆れます。上場時の公募価格を高く設定できるし、これって粉飾してから上場しないとむしろ損ですよね?

逆に言えば、これから特設注意市場の審査を受けるユー・エム・シー・エレクは上記2点を何とかかんとかして改善報告書をライティングすれば良いんじゃないでしょうか。実行出来れば、ですけど。

資金繰りについてはすぐにヤバいと言う訳ではなさそうですが、メイン行のみずほ銀行は結構怒ってそうじゃないですか?

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ユー・エム・シー・エレクトロニクス 四半期報告書-第53期第3四半期 2020年2月14日 16:55開示 より抜粋

上場前からの融資に加えて上場時と2018年の公募増資の主幹事はみずほ証券ですから、みずほとしてはメンツ丸つぶれですよねえ。騙されてた上に片棒担がされちゃったわけですから。当然融資残に関しては条件見直しが必須になります。ちなみに火中の栗を拾う格好になった仙波陽平副社長(管理本部長、2019年4月1日着任)はみずほ銀行出身です。

ちなみに現任の代表取締役社長高田昭人氏は内山前社長が修行のために働いていた加賀電子時代から同い年のお友達らしいですね。実際のところは分かりませんが、ピンチヒッターと言うよりは中継ぎ投手的なポジションに見えます。

ともかく現在も筆頭株主である内山前社長の影響力をどこまで排除できるかが注目されてるのではないでしょうか?

 

 

東芝事件以前、東証もキッチリやることやってた時代がありました。

ライブドアをはじめ、以下の事案では粉飾していた上場会社に上場廃止という形でおしおきを与えています。

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ネガティブ上場廃止企業 事由一覧 - 金融機関の営業部屋 本店より抜粋

 

ところで、粉飾って犯罪じゃないんですか

あまりにも軽いノリで許されている昨今の状況からして勘違いしてしまいがちですけど、

会社法第960条(特別背任、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金)

会社法第976条(計算書類等虚偽記載罪、100万円以下の罰金)

金融商品取引法第197条及び第207条(有価証券報告書虚偽記載罪、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金)

刑法第246条(詐欺罪、10年以下の懲役)

あたり、構成要件を満たしてません?

実際のところ上の表に挙げたうちで、ライブドア、アクセス、春日電機、ユニオンHD、エフオーアイ、シニアコミュニケーション、セラーテムテクノロジー、太陽商会、石山gateway などは経営者や元経営者など首謀者が逮捕されたり刑務所で作業に勤しむことになったりしているのですが、やはり東芝チャレンジ事件が発覚した2015年以降は上場企業にこの刑法は適用されることはなくなったようです。